FINAL HOME, Autumn/Winter 2003-2004

 

 FINAL HOME
Autumn/Winter 2003-2004

 

ファッションビジネスのイズム:エイ・ネット
What's fashion business?: A-net

July 2003
SO-EN
Editing by Kazushi Takahashi
Photography by Katsumi Fujii

名実ともにトップのデザイナーズブランドを配するアパレルメーカー。デザイン・企画、パターン、生産、物流など服作りに必要なあらゆる業務を自社で行なっている。異なった個性を持つブランドが集合して、エイ・ネットという大きな組織が形成されている。

名実ともにトップのデザイナーズブランドを配するアパレルメーカー。デザイン・企画、パターン、生産、物流など服作りに必要なあらゆる業務を自社で行なっている。異なった個性を持つブランドが集合して、エイ・ネットという大きな組織が形成されている。


Final Home

ファイナルホームの活動

都市でサバイバルするための機能的な服、という特異なコンセプトに基づいてデザインされているブランド。ファイナルホームのウェアやグラフィックには、ファッションの流れを動かすサブカルチャーを視野に入れた発想が息づいている。

ファイナルホームの活動

都市でサバイバルするための機能的な服、という特異なコンセプトに基づいてデザインされているブランド。ファイナルホームのウェアやグラフィックには、ファッションの流れを動かすサブカルチャーを視野に入れた発想が息づいている。

1. 原宿店のオープン記念イベントは、UK・ブライトン出身のグラフィティアーティストREQによるライブペインティング。完成したグラフィティを“FINAL HOME GRAPHICS” レーベルからTシャツとしてリリース。¥9,800 FINAL HOME

2. 初期の紙袋。44個のポケットがついたコートの使用説明が裏にかかれている(7のイラスト参照)。

3. ホンマタカシが空撮した東京の風景を収めたミニサイズのイメージビジュアル。

4. 東京・青山を空撮した大判のビジュアルを収納。写真には災害時に避難できる場所が記されている。

5. 1999-2000年秋冬カタログ。7と同じイラストがかかれたガムテープ、テープ状に巻いた商品カタログのセット。

6. ロシア製カメラLOMO公認のケース。

7. 1999年春夏カタログ。

8. 2003-04年秋冬展示会の招待状。システムノートに挟める。

9. 特大サイズのポスター。

10. 2001-02年秋冬カタログ。撮影はマーク・ボスウィック。

11. 2002-03年秋冬の販促品。「DO NOT DISTURB!」などと書いて部屋のドアノブにかけて。

12. 2001年春夏ビジュアル。大判サイズ。

13. 昨年10月末にオープンした原宿店の告知ポスター。

秋冬のアイテム

2003-2004年秋冬展示会にて。縫い目にテープをはり防水性を高めたカモフラージュ柄のコートなど、機能とデザインが絶妙なバランスを保っている。

1. 原宿店のオープン記念イベントは、UK・ブライトン出身のグラフィティアーティストREQによるライブペインティング。完成したグラフィティを“FINAL HOME GRAPHICS” レーベルからTシャツとしてリリース。¥9,800 FINAL HOME

2. 初期の紙袋。44個のポケットがついたコートの使用説明が裏にかかれている(7のイラスト参照)。

3. ホンマタカシが空撮した東京の風景を収めたミニサイズのイメージビジュアル。

4. 東京・青山を空撮した大判のビジュアルを収納。写真には災害時に避難できる場所が記されている。

5. 1999-2000年秋冬カタログ。7と同じイラストがかかれたガムテープ、テープ状に巻いた商品カタログのセット。

6. ロシア製カメラLOMO公認のケース。

7. 1999年春夏カタログ。

8. 2003-04年秋冬展示会の招待状。システムノートに挟める。

9. 特大サイズのポスター。

10. 2001-02年秋冬カタログ。撮影はマーク・ボスウィック。

11. 2002-03年秋冬の販促品。「DO NOT DISTURB!」などと書いて部屋のドアノブにかけて。

12. 2001年春夏ビジュアル。大判サイズ。

13. 昨年10月末にオープンした原宿店の告知ポスター。

秋冬のアイテム

2003-2004年秋冬展示会にて。縫い目にテープをはり防水性を高めたカモフラージュ柄のコートなど、機能とデザインが絶妙なバランスを保っている。

44ポケットつきコートのコンセプト

ポケットだらけ。ファイナルホームは、好きなものを詰めてジッパーを閉じれば、あなただけの服になります。新聞紙を詰めると防寒着に、おしりのポケットにクッションを入れるとスポーツ観戦用に。また、非常食や薬品を入れておけば災害時のサバイバルウェアにもなり、文房具やお財布を入れておけば身にまとうバッグにもなります。

ファイナルホームはそこからすべてがスタートするゼロの服です。全身を覆う44のポケットの中身が都市や自然の中であなたの体と心を支える道具です。どんなふうにも使える便利な服なのです。今だけのファッションではなく、生活の必需品として、そしてあなたの究極の家として長く着てください。

津村耕佑からのメッセージ

ファイナルホームプロジェクトは、都市生活をクリエーティブに生き抜くためにアイディアを出し合って、環境や人の考え方に変化をもたらせたらいいというものです。プランを具現化しているのが、私が1994年に発表した、現在〝HOME1〞と呼ばれている服(44ポケットのコート)です。最初は私一人で始めましたが、現在はデザイナー参加型のブランドになっています。ウェア中心の商品構成ですが、アートエキシビションへの参加、アーティストとのコラボレーションなど幅広い活動を繰り広げています。サブカルチャーが時代の中心にスライドした現代は、ベーシックとファッションの両輪が不可欠で、メディアに対しても同様だと思います。今回のこのページからそのことが読みとれると思います。

44ポケットつきコートのコンセプト

ポケットだらけ。ファイナルホームは、好きなものを詰めてジッパーを閉じれば、あなただけの服になります。新聞紙を詰めると防寒着に、おしりのポケットにクッションを入れるとスポーツ観戦用に。また、非常食や薬品を入れておけば災害時のサバイバルウェアにもなり、文房具やお財布を入れておけば身にまとうバッグにもなります。

ファイナルホームはそこからすべてがスタートするゼロの服です。全身を覆う44のポケットの中身が都市や自然の中であなたの体と心を支える道具です。どんなふうにも使える便利な服なのです。今だけのファッションではなく、生活の必需品として、そしてあなたの究極の家として長く着てください。

津村耕佑からのメッセージ

ファイナルホームプロジェクトは、都市生活をクリエーティブに生き抜くためにアイディアを出し合って、環境や人の考え方に変化をもたらせたらいいというものです。プランを具現化しているのが、私が1994年に発表した、現在〝HOME1〞と呼ばれている服(44ポケットのコート)です。最初は私一人で始めましたが、現在はデザイナー参加型のブランドになっています。ウェア中心の商品構成ですが、アートエキシビションへの参加、アーティストとのコラボレーションなど幅広い活動を繰り広げています。サブカルチャーが時代の中心にスライドした現代は、ベーシックとファッションの両輪が不可欠で、メディアに対しても同様だと思います。今回のこのページからそのことが読みとれると思います。

津村耕佑、ディレクター

上着の内側に隠したスプレー缶を取り出してストリートの壁に落書きをしたり、夜中のパーティイベントで大音量で音楽を流したり。良識ある人たちが眉をひそめそうなサブカルチャーは、社会に認められた親文化に対するアンチテーゼだ。しかしその反抗的なスタンスこそが次の時代のファッションを生み出す原動力になることがある。

ファイナルホームはたしかな服作りのノウハウを活用しながらサブカルチャーに属する人たちの感性にフィットしたクリエーションを生み出している。津村耕佑は言う。「『都市をサバイバルするための服』というどこにもないコンセプトがあるという時点で、ほかのデザイナーズブランドに並ぶ存在です」

クオリティとサブカルチャーとが融合していることは、ポスターやカタログなどのグラフィックにも顕著だ。写真撮影をホンマタカシやマーク・ボスウィックらに依頼していることなども意識の高さの表われだろう。「ビジュアルの完成度は高くあるべきと考えています。ファイナルホームの場合は服をツール(道具)として持っていくためのビジュアルです。通常のファッションビジュアルは写真一枚で人の情緒に訴えようとしますが、ファイナルホームはグラフィックでおもしろく見せている。製品説明に近いものです」。44個のポケットがついたナイロンコートはブランドスタートの記念すべきアイテム。このコートを入れた紙袋の裏面には、災害時でも都市で生き抜いていくためのポケット活用法がイラストで描かれている。「自分でかいたイラストを基に作製しました。グラフィックは一種のマークです。ファイナルホームにはシンボルマークがあります。同じマーク、同じメッセージを何度も繰り返して広く浸透させることが重要なのです」

津村耕佑、ディレクター

上着の内側に隠したスプレー缶を取り出してストリートの壁に落書きをしたり、夜中のパーティイベントで大音量で音楽を流したり。良識ある人たちが眉をひそめそうなサブカルチャーは、社会に認められた親文化に対するアンチテーゼだ。しかしその反抗的なスタンスこそが次の時代のファッションを生み出す原動力になることがある。

ファイナルホームはたしかな服作りのノウハウを活用しながらサブカルチャーに属する人たちの感性にフィットしたクリエーションを生み出している。津村耕佑は言う。「『都市をサバイバルするための服』というどこにもないコンセプトがあるという時点で、ほかのデザイナーズブランドに並ぶ存在です」

クオリティとサブカルチャーとが融合していることは、ポスターやカタログなどのグラフィックにも顕著だ。写真撮影をホンマタカシやマーク・ボスウィックらに依頼していることなども意識の高さの表われだろう。「ビジュアルの完成度は高くあるべきと考えています。ファイナルホームの場合は服をツール(道具)として持っていくためのビジュアルです。通常のファッションビジュアルは写真一枚で人の情緒に訴えようとしますが、ファイナルホームはグラフィックでおもしろく見せている。製品説明に近いものです」。44個のポケットがついたナイロンコートはブランドスタートの記念すべきアイテム。このコートを入れた紙袋の裏面には、災害時でも都市で生き抜いていくためのポケット活用法がイラストで描かれている。「自分でかいたイラストを基に作製しました。グラフィックは一種のマークです。ファイナルホームにはシンボルマークがあります。同じマーク、同じメッセージを何度も繰り返して広く浸透させることが重要なのです」


A-net :会社について / About the Company

WEBサイト

採用募集や会社概要はWEBサイトにて。ツモリチサト、ズッカ、ファイナルホームのオンラインショッピングもできる。

http://www.a-net.com/

WEBサイト

採用募集や会社概要はWEBサイトにて。ツモリチサト、ズッカ、ファイナルホームのオンラインショッピングもできる。

http://www.a-net.com/

 

日本橋に程近い東京・新大橋の本社ビル。隅田川沿いで建物は以前、倉庫として使われていた。広々としたモダンなロビー、川沿いのクリーンな社員食堂など空間が心地よい。

株式会社エイ・ネット(以下エイ・ネット)は現在7つのブランドを世に送り出している。ツモリチサト、ズッカ、ファイナルホーム、スナオクワハラ、ティナリス、プランテーション、ウィンドコート(本誌掲載順)はそれぞれ独自のスタイルを持ち、お互いに競合することがない。コレクションに参加しているブランドだけでもツモリチサト(東京)、ズッカ(パリ)、スナオクワハラ(東京)と、3つもある。また、それ以外のブランドも定期的なコレクションこそ行なってはいないが、それぞれが独自のスタイルでクリエーションを展開し、ファッションシーン全体の中でも際立つ個性を発揮している。

エイ・ネットの設立まで

プランテーションのスタートが1982年、スナオクワハラの前身であるI.S.が’83年に、ズッカは’89年、ツモリチサトは’90年、そしてファイナルホームが’94年にスタートした。

来歴もコンセプトも異なるブランドの集合体としてエイ・ネットが設立されたのは、’96年。今年の8月で丸7年になる。イッセイ ミヤケ・グループから企画・製造・販売を行なう会社を新たに設立した理由は、ブランドそれぞれの個性を更に磨き、創造性を高め、新たな可能性を追求していくことにあった。

A-netの〝A〟は個を表わす冠詞のaで、一人一人の個性をつなぎ、大きな力を創造することを意味している。

ネットワークの時代だからこそ個を大切にし、そして協調を大切にしたい。

A-netの社名にはそんな思いが込められている。

モノ作りにこだわり、ブランドのパワーを高めることによりビジネスを発展させる。

このモノ作りへのこだわりこそがエイ・ネットのバラエティに富んだブランド展開を貫く軸となっている。

クリエーションの集合体

エイ・ネットはクリエーションを最も重視している会社だ。ショップでは路面店を旗艦に自分たちのやり方でビジネスを行なっている。デザイナーを円の中心とした「服作り」に集中して、ブランドのオリジナリティを追求し、そこから製造・販売までファッションを生み出すための業務をトータルに手がけることにより、その個性を表現している。また、ファッションビジネスの枠を超えた活動をするツムラルームの存在からも、エイ・ネットの独自性がうかがえる。

社員数は約620名(’03年4月現在)。そのうち、400名ほどがショップスタッフである。若い力をくみ上げることにも意欲を見せるエイ・ネットは、今後も国内・海外に向けて新たなクリエーティブなスタイルを生み出していくことだろう。

株式会社エイ・ネット(以下エイ・ネット)は現在7つのブランドを世に送り出している。ツモリチサト、ズッカ、ファイナルホーム、スナオクワハラ、ティナリス、プランテーション、ウィンドコート(本誌掲載順)はそれぞれ独自のスタイルを持ち、お互いに競合することがない。コレクションに参加しているブランドだけでもツモリチサト(東京)、ズッカ(パリ)、スナオクワハラ(東京)と、3つもある。また、それ以外のブランドも定期的なコレクションこそ行なってはいないが、それぞれが独自のスタイルでクリエーションを展開し、ファッションシーン全体の中でも際立つ個性を発揮している。

エイ・ネットの設立まで

プランテーションのスタートが1982年、スナオクワハラの前身であるI.S.が’83年に、ズッカは’89年、ツモリチサトは’90年、そしてファイナルホームが’94年にスタートした。

来歴もコンセプトも異なるブランドの集合体としてエイ・ネットが設立されたのは、’96年。今年の8月で丸7年になる。イッセイ ミヤケ・グループから企画・製造・販売を行なう会社を新たに設立した理由は、ブランドそれぞれの個性を更に磨き、創造性を高め、新たな可能性を追求していくことにあった。

A-netの〝A〟は個を表わす冠詞のaで、一人一人の個性をつなぎ、大きな力を創造することを意味している。

ネットワークの時代だからこそ個を大切にし、そして協調を大切にしたい。

A-netの社名にはそんな思いが込められている。

モノ作りにこだわり、ブランドのパワーを高めることによりビジネスを発展させる。

このモノ作りへのこだわりこそがエイ・ネットのバラエティに富んだブランド展開を貫く軸となっている。

クリエーションの集合体

エイ・ネットはクリエーションを最も重視している会社だ。ショップでは路面店を旗艦に自分たちのやり方でビジネスを行なっている。デザイナーを円の中心とした「服作り」に集中して、ブランドのオリジナリティを追求し、そこから製造・販売までファッションを生み出すための業務をトータルに手がけることにより、その個性を表現している。また、ファッションビジネスの枠を超えた活動をするツムラルームの存在からも、エイ・ネットの独自性がうかがえる。

社員数は約620名(’03年4月現在)。そのうち、400名ほどがショップスタッフである。若い力をくみ上げることにも意欲を見せるエイ・ネットは、今後も国内・海外に向けて新たなクリエーティブなスタイルを生み出していくことだろう。